胃もたれや胃のむかつき、胸焼け、膨満感(お腹が張る)、げっぷ、胃の不快感など胃の不調は、多くの人が日常的に抱えている現代病の一つです。
胃の不調は、胃の不調だけではなく、モチベーションや集中力の低下や精神的に不安定になるなど、日常生活におけるパフォーマンス低下に大きく関わってきてしまうため、胃の不調で悩んでいる方は多いと思います。
こういった胃の不調はどのような原因で起きており、私たちは一体どのような対処をしていけばよいのでしょうか。
本記事では、胃の不調が続く原因と、その対処法について詳しくご紹介いたします。
胃の不調に悩む人は全国民の5人に1人
厚生労働省が平成28年に行った「国民健康基礎調査」によれば「胃のもたれ・胸焼け」を訴える人の数は、男性でおよそ5人に1人、女性はおよそ4人に1人の割合にのぼっています。
【参考元:厚生労働省:平成28年「国民健康基礎調査」】
また、本調査結果を見ると、男女共に、年代が上がるごとに「胃のもたれ・胸焼け」を訴える人の割合は増加しています。
この結果から、少なくとも「胃もたれ・胸焼け」のような胃の不調の原因の一つとして「加齢による胃の機能低下」があるということが分かります。
また、男性と女性では、女性の方が胃の不調を訴える人の割合が大きくなっています。
女性は男性に比べて月経や妊娠、閉経といったホルモンバランスが乱れやすく、その影響で自律神経が乱れ、胃の不調を招く人の割合が多いと考えられています。
「加齢」や「自律神経の乱れ」など胃の不調は実にさまざまな原因によって引きおこります。
いったいどのような事が胃の不調を招いてしまうのか、その原因についてまとめてみましょう。
胃の不調の主な原因
胃の不調は、胃が正常な働きをしなくなった時に起こります。
胃の役割は私たちが取り入れた食物を胃酸によって分解し、吸収しやすい状態にすることです。
具体的には次の図のように「胃酸の分泌」「粘液の分泌」、そして胃の中のものと胃酸を混ぜ合わせる「蠕動運動(ぜんどううんどう)」がバランスよく働くことによって胃は正常に働きます。
しかし、この3つの働きのバランスが何らかの原因で崩れた場合に、胃もたれや、胸焼け、げっぷ、胃の膨満感、胃の不快感、胃痛、吐き気、食欲不振などの様々な胃の不調につながってきてしまうのです。
例えば、胃酸は胃の粘膜自体を傷つけられるほど強い酸です。
そのため、胃酸の分泌が行われる際には、必ず胃の粘膜を胃酸から守る粘液も分泌されます。
この粘液の分泌が少なくなってしまったり、粘液では守りきれないほどの大量の胃酸が分泌してしまうと、胃の粘膜が胃酸によって傷つけられ、胃の不調につながります。
また蠕動運動がうまく行われず、消化しきれないといった場合も、胃の不調につながってきてしまいます。
「胃酸分泌」「粘液分泌」「蠕動運動」の3つのバランスは自律神経によって自動コントロールされており、この自律神経が乱れてしまったり、病気や薬など胃に直接影響を与えてしまうことが3つのバランスを崩すことにつながり、胃の不調を招く主な原因になっているのです。
胃の働きを乱す主な原因とは?
主に次のようなことが原因で胃の「胃酸分泌」「粘液分泌」「蠕動運動」の3つの働きのバランスは崩れ、胃の不調がおこります。
- アルコール
- 喫煙
- ストレス
- 薬の作用
- 加齢
- ピロリ菌
- 偏った食生活
- 病気
また、胃もたれや胸焼け、胃の膨満感、胃の不快感といった胃の不調が続いているのにもかかわらず胃薬を飲んでも治らなかったり、病院で検査をしてもらっても異常がないと診断されてしまったり、特に胃に負担がかかるようなことは一切していないのにも関わらず胃の不調が症状としてあらわれるなど、原因不明である場合が多いのも特徴です。
では、それぞれ具体的に上記ような原因がどのようなプロセスで胃の不調につながっていくのか、またどのような対処をすればよいのかについて解説していきます。
アルコール
胃では、食物を消化するために、塩酸とタンパク質分解酵素の元となるペプシノーゲン(塩酸によってタンパク質分解酵素ペプシンとなる)といった強力な胃酸が分泌されます。
その強さは、胃の粘膜を傷つけてしまうほどです。この胃酸から胃の粘膜を守る働きをするのが粘液です。
アルコールを摂取すると、胃が刺激され、胃酸が大量に分泌され、胃の粘液では胃の粘膜を守りきれなくなってしまいます。
大量に分泌されてしまった胃酸によって、胃の粘膜が傷つき、胃の不調につながってきてしまうのです。
少量のアルコール(アルコール度数が低め)であれば、食前酒のように胃酸の分泌を促す効果があるため逆に健康に良いとされていますが、大量のアルコールを摂取してしまうと、胃がその分強く刺激されてしまい胃酸が大量に分泌されてしまいます。結果的に胃の粘膜が傷ついてしまいやすい状態を作り出してしまうのです。
また、胃が空っぽの状態でのアルコールの摂取も、胃の粘膜をアルコールが直接刺激してしまうため、粘膜を大きく傷つけてしまいます。
つまり、日常的に飲み会などで行われている、お腹に何も入っていない状態での乾杯のアルコールの摂取や、飲み過ぎなどアルコールの過剰摂取は胃の3つの働き(胃酸分泌・粘液分泌、蠕動運動)のバランスを崩し、胃の不調を招く行動なのです。
対処法としては胃の不調が起きてしまった後の対処よりも「アルコール摂取前に物を胃袋に入れる」などアルコールを摂取する前の準備が特に大切です。
チーズのようなタンパク質と乳脂肪を豊富に含む食品や飲み物をアルコール摂取前に取り入れておくと、アルコールから胃の粘膜を守ってくれる働きが期待できるので、おすすめです。
また、度数の強いアルコールは刺激がその分強力になるため、胃への負担も大きくなります。
アルコール摂取量の調整は飲み会の空気や状況によって難しい場合があると思いますが、度数の強いアルコールの摂取は極力控えるようにしましょう。
もしアルコールによる胃の不調を感じた場合には、胃の粘膜が傷ついてしまっている可能性があるため、「総合胃腸薬」を飲むことをおすすめします。
それでも胃の不調が続いたり、胃の痛みに発展してしまうという場合には、一度医療機関で検査をされた方が良いと言えます。
喫煙
喫煙と胃はあまり関係が無いように思えますが、実は深い関わりがあります。
主にタバコを吸う事によりもたらされる次のような体の変化が、胃の3つの働きのバランスを崩し、胃の不調につながる主な原因です。
喫煙により起きる体の変化 | 概要 |
血行不良 | 胃の粘膜には無数の毛細血管が張り巡らされており、この毛細血管により運ばれてくる新鮮な酸素と栄養素によって、胃の粘膜は胃液を正常に分泌することができます。喫煙により血行不良になると、毛細血管から新鮮な酸素と栄養素を補給しづらくなり、この機能が低下するだけではなく、粘膜自体の抵抗力も低下してきてしまいます。結果的に、胃の働きのバランスが崩れ、胃の不調につながってきてしまうのです。 |
プロスタグランジンの減少 | プロスタグランジンとは、胃を守る粘液の一種です。長年の研究により、喫煙をするとこのプロスタグランジンの分泌量が減ってしまうことが分かっています。そのため粘液と胃酸のバランスが崩れ、胃酸によって胃の粘膜が傷つきやすい状態になってしまいます。 |
自律神経の乱れ | タバコに多く含まれるニコチンには、自律神経の中でも副交感神経を優位にさせる効果があります。まず、自律神経は臓器の働きや発汗、血圧調整、体温調整など私たちに必要な体内機能を24時間365日自動でコントロールしている神経です。自律神経には交感神経と副交感神経があり、これらがシーソーのように交互に働くことで、私たちの健康を維持しています。交感神経は活動時、副交感神経がリラックス時に働く神経です。タバコによってリラックス効果が感じられるのは、先ほどご紹介したニコチンが副交感神経を刺激するためです。しかしニコチンを過剰摂取しすぎると、ニコチンによる強い刺激が当たり前になってきてしまい、自律神経の乱れにつながってきてしまうのです。禁煙によって一時的に自律神経失調症のように、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、だるさや体のいたるところの異常を感じやすくなるのはこのためです。自律神経は臓器の機能をコントロールする重要な神経なので、この機能が乱れると、十二指腸液や胆汁など普段は胃に流れ込まないものが逆流してしまいます。これにより胃の粘膜が傷つき、胸焼けなどの胃の不調につながってきてしまうのです。 |
このように喫煙は、胃の不調につながる様々な変化を体にもたらしてしまうので、普段から胃もたれや胸焼けに悩んでいる方は、できるだけ禁煙を心がけるようにしましょう。
ストレス
よく「ストレスで胃が痛む」と言いますが、日常的に感じるストレスも、胃の働きを乱す大きな原因の一つです。
特に胃はストレスによって影響を受けやすい臓器だと言われています。
その理由はストレスが、私たちの生体機能(体温調整、血圧調整、臓器の機能など)をコントロールする自律神経の働きを乱してしまうためです。
自律神経には活動時に働く交感神経と、リラックス時に働く副交感神経があり、それらが交互にバランスよく働くことにより、私たちの生体機能を維持しています。
通常、交感神経が働いている活動時には血管が収縮し、胃の活動(胃酸分泌、粘液分泌、蠕動運動)は減少します。
一方で副交感神経が働くリラックス時にはこれらの活動が活発になります。
このように胃の働きは交感神経と副交感神経がバランスよく働くことによって保たれているのです。
ストレスにより、自律神経が乱れると、必要な時に胃の活動が減少し、消化しきれずに胃の中に食べ物が残ってしまったり、不要な時に胃の活動が活発になり、胃酸が胃の粘膜を傷つけてしまったり、胃の働きを乱してしまいます。
このように、ストレスによる自律神経の乱れが、胃の働きを乱し、胃の不調につながる大きな原因なのです。
また、ストレスは人を暴飲暴食に走らせたり、過剰喫煙やアルコールの過剰摂取に走らせたりします。
ストレスによりこういった行動が行われてしまうのも、胃の不調につながる大きな原因です。
対処法としては、「総合胃腸薬」を飲むなどが一時的な胃の不調を押さえる上では良いと言えます。
しかし、ストレスによって乱れた自律神経を整えない限り、症状は繰り返し起こり続けます。
ストレスによる胃の不調は慢性化しやすく、人によっては数ヶ月から数年間もの長期間にわたり原因不明の胃の不調に悩まされてしまいやすくなります。
ストレスを受け続ける根本的な状況の改善とともに、自律神経に直接アプローチをして乱れを整える必要があります。
その一つの方法として「お腹のコリほぐし整体」がおすすめです。
薬の作用
ある種類の薬の服用や、薬を服用するタイミングによっても胃の不調を招くことがあります。
風邪薬や解熱剤を飲んで胃の調子が悪くなった経験はありませんか?
実は、風邪薬や解熱鎮痛剤のような非ステロイド性消炎鎮痛薬の効果により、胃の粘膜を守る胃液の一種であるプロスタグランジンが分泌量が大きく低下してしまいます。
飲み薬だけではなく、外用薬にも同じ影響が出るものがありますので、十分注意しましょう。
そのため、胃の粘液による防御力が弱まり、胃酸によって胃の粘膜が傷ついてしまい、胃の不調を引き起こしてしまうのです。
また、空腹時に薬を服用してしまうと、胃が薬を食物だと判断してしまい、胃酸を分泌してしまいます。
結果として胃の粘膜を傷つけてしまうのです。
よく薬を服用する際に「食後に」と言われることが多いのは、薬の服用によって胃の粘膜を傷つけないようにするためなのです。
風邪薬や解熱鎮痛剤の服用は対処のしようがありませんが、薬を服用するタイミングは、処方される際に説明されたタイミングを守って服用するようにしましょう。
加齢
加齢も胃の働きを乱す大きな要因の一つです。
加齢とともに胃の働きは徐々に弱まっていきます。
具体的には胃酸の分泌量や、粘液の分泌量、そして蠕動運動の量が低下してきてしまうのです。
それに伴い、普通の生活をしていても胃の不調を感じやすくなります。
また、女性の場合には、閉経などによるホルモンバランスの乱れにより自律神経が乱れやすくなり、より胃の働きが乱れ、胃の不調が出やすくなります。
対処法としては、加齢による胃の働きの低下にともない、食生活をはじめとする生活習慣をしっかりと正すことが大切です。
例えば、食事の量を減らしたり、消化に良い食生活に切り替えたり、アルコールを控えたりするなど、日頃の生活習慣の改善が、胃の不調の改善に大きくつながってきます。
また、更年期障害などによる自律神経の乱れによっても胃の不調はあらわれやすくなりますので、生活習慣の改善とともに定期的に自律神経を整える習慣をつけた方が良いと言えます。
ピロリ菌
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃の粘膜内に生息する細菌であり、胃に関わる様々な疾患の原因の一つです。
ピロリ菌は胃の粘液による防御力を低下させてしまうため、ちょっとしたストレスによる自律神経の乱れや、アルコール、喫煙、薬の作用などによって胃の粘膜が傷つきやすい状態になります。
これが慢性的な胃の不調、または時として重大な疾患につながってきてしまいます。
ピロリ菌は完全な免疫力が備わっていない幼少期に、衛生状態が悪い水や食べ物を口にすることによって感染します。
例えば、母親が食べて柔らかくして食べ物を与える行為、子供の嘔吐物に触れた手でいろいろなものを触る行為など実にさまざまな感染経路によっても感染が広がっていきます。
基本的には衛生状態が整った状態で幼少期を過ごすことで感染は減少しますが、60歳以上の年代では幼少期に井戸水などを飲用水として使用していたために感染者数が多い傾向があります。
年代が下がるにつれてピロリ菌感染者は減少しているため、今後衛生管理がより徹底されるに伴って、ピロリ菌の感染者はさらに減少すると予測されています。
対処法としてピロリ菌を自分が保菌しているかどうかの検査を受け、ピロリ菌除菌薬を服用することで除菌することが可能です。
偏った食生活
胃は私たちが取り入れた食物を分解してくれる器官です。
そのため、食生活の乱れが胃の働きに大きな影響を及ぼします。
次のような偏った食生活は胃の働きを乱し、胃もたれや胸焼け、げっぷ、胃の不快感など胃の不調につながってきてしまうので注意しましょう。
寝る前に食事をする | 眠っている間には胃は十分に食物を分解させることができません。そのため、消化しきれなかった食物が胃に残り続けます。これが翌日の胃もたれなどの胃の不調につながってきてしまうのです。また、交換神経と副交感神経が乱れる原因にもなります。 |
暴飲暴食 | 通常食物が胃に入ると、胃酸の分泌量が増えます。しかし、食べ過ぎや飲み過ぎにより胃酸が過剰に分泌されてしまい、胃の粘膜を傷つけてしまいます。 |
カフェインや糖質などの過剰摂取 | 食事によって受けるストレスも、実は自律神経を乱してしまう大きな原因の一つです。例えばコーヒーや栄養ドリンクの飲み過ぎによるカフェインの過剰摂取や、糖質の取り過ぎがその代表例です。 |
もし、このような食事を日常的に行っている場合には、消化の良い食事に切り替えるなど食生活を改善していく必要があります。
病気
胃もたれや胃のむかつき、胸焼けなど病気によって胃の不調があらわれる場合もあります。
そういった場合には、根本的な原因である病気を治すことで、胃の不調を改善することが可能です。
「前日の飲み過ぎや食べ過ぎ」「疲れ」「睡眠不足」などご自身の中で胃の不調の原因が明確であればご自身で対処されたり、予防をされたりするのは良いと思いますが、胃もたれや胸焼け、げっぷなど典型的な胃の不調とともに、次のような症状が見られる場合は何かしらの胃の病気である可能性が高くなるので、一度医療機関などで診察や検査を受けた方が良いと言えます。
また、胃もたれや胸焼けなどではなく腹痛に変わってきたり、胃の不調が長期間にわたり続く場合も同じく、病院で検査を受けた方が良いと言えます。
胃もたれとともにあらわれる症状 | 可能性のある病気 |
食べ物を飲み込むことが困難 | 食道神経症
食道憩室 食道裂孔ヘルニア |
胸の痛みを感じる | 食道裂孔ヘルニア
食道潰瘍 心筋梗塞 |
吐き気を感じる | 急性胃炎
食道アカラシア 消化性潰瘍 神経性無食欲症 |
ひどい胸焼け | 逆流性食道炎 |
げっぷとともにあらわれる症状 | 可能性のある病気 |
胸焼け | 胃がん
胃酸過多症 |
胸焼け無し | 空気嚥下症
胃拡張 |
原因不明
胃の不調の中には、薬を飲んでも治らない、または病院で検査をしても原因が分からないものがあります。
このように、原因が良くわからない胃の不調を総称して「機能性消化管障害(機能性ディプペプシア:FD)」と呼びます。
一昔前まで「神経性胃炎」と呼ばれていたりしたものです。
実は、ある統計では日本人の4人に1人がこの機能性消化管障害(機能性ディプペプシア)を持つとされており、胃もたれや胃の膨満感、胃の不快感、胃のむかつき、胸焼けなどが主な症状です。
この機能性消化管障害(機能性ディプペプシア)の原因は未だ解明されていませんが、ストレスやピロリ菌、食生活、胃酸などが主な原因と言われています。
一時的なものではなく慢性的な胃の不調となることが多いのも特徴の一つです。
原因不明の胃の不調に半年以上悩まされている場合や、薬を飲んでも、病院に行っても異常が見当たらない場合には、この機能性消化管障害(機能性ディプペプシア)の可能性が高いと言えます。
胃の不調の主な原因は自律神経の乱れ
胃は臓器の中でも自律神経と深く関わっています。
そのため自律神経が乱れると、胃の働きも大きく乱れ、それが胃の不調につながってきてしまいます。
先ほど胃の働きを乱す主な原因をご紹介しましたが、胃の不調の主な原因として「アルコール」や「病気」「ピロリ菌」「薬の作用」のようにその原因自体が胃に直接影響を及ぼす場合と、「ストレス」や「加齢」「偏った食生活」など、その原因によって自律神経が乱れ、自律神経の乱れが胃の不調につながってきている場合の大きく2種類に分けることができます。
直接影響を及ぼしている場合には、その原因を改善することによって、胃の不調の改善を行うことができます。
しかし、「ストレス」や「加齢」「偏った食生活」のように自律神経が乱れによって胃の不調につながっている場合には、乱れてしまった自律神経を改善しない限り、胃の不調を改善することはできません。
そのため胃もたれや胸焼け、胃のむかつき、胃の不快感などが続く主な原因は、自律神経の乱れであることが多いのです。
また、自律神経の乱れによって引き起こされる胃の不調は対症療法などによって一時的に改善されても、自律神経が乱れている以上は、胃の不調があらわれ続けるため、慢性化しやすく、原因も分かりづらいという特徴があります。
※ある研究では原因不明の機能性消化管障害(機能性ディプペプシア)の主な原因は日常的なストレスや食生活の乱れ、生活習慣の乱れなどによる自律神経の乱れによって引き起こされているのではないかと考えられています。
胃と自律神経の深い関係性
臓器の中でも胃は特に自律神経と深い関わりがあります。
例えば活動時に働く交感神経が優位な場合には、胃の毛細血管は収縮し胃の働き(胃酸分泌・粘液分泌・蠕動運動)は低下します。
一方で、リラックス時に働く副交感神経が優位の場合には、胃の働きが活発になります。
このように、胃の働きそのものが交感神経と副交感神経に左右されるため、この2つの神経のバランスが崩れると、胃の働きも乱れてきます。
ストレスは交感神経を活性化させる効果があり、ストレスの多い現代人は交感神経が優位になりすぎている傾向があります。
近年、不眠症などの症状が増えてきたのも、通常は副交感神経に切り替わっていなければならないところ、ストレスや食生活の乱れなどにより、交感神経が優位になり続けているためです。
交感神経が優位の状態では胃はうまく働くことができません。
そのため、消化不良が起きて、それが胃もたれなど胃の不調につながってきてしまうのです。
自律神経の乱れによって起きる胃の不調を改善するためには?
自律神経が乱れることは胃の不調に大きく関わってきます。
また、現代はストレスが多く、自律神経が乱れやすい環境にあると言っても過言ではありません。
自律神経は私たちの意志によってコントロールすることはできません。
そのため、自律神経が乱れる原因を作っている生活習慣の乱れを整えること、そして既に乱れてしまった自律神経自体を整える習慣をつけることが胃の不調を改善する上でとても大切です。
生活習慣を整える
生活習慣は自律神経の乱れを引き起こす大きな原因の一つです。
生活習慣は「食生活」「運動」「睡眠」と日々受けている「ストレスに関わる習慣」、の4つに分けることができます。
たとえ自律神経の乱れを直したとしても、自律神経を乱してしまうような生活習慣が常態化していたのでは、自律神経はまた乱れてきてしまいます。
そのため、自律神経の乱れを直すだけではなく、同時に自律神経を乱しにくい生活習慣に変えていくことも大切です。
では、「食生活」「運動」「睡眠」と、日々受けているストレスに関わる習慣においてどのようなポイントに注意していけば良いのでしょうか。
それぞれの習慣において注意すべきポイント、やってはいけない事などを詳しくご紹介いたします。
食習慣における注意すべきポイント
食事の際には、副交感神経が優位になります。
食後に眠くなるのは、副交感神経が優位になり、リラックス状態になるためです。
食習慣を乱すと、通常は副交感神経が優位にならなければならないところ、交感神経が優位になってしまったり、自律神経が乱れる引き金となってしまいます。
そうならないためにも、食生活においては次の3点に気をつけましょう。
- 栄養バランスの良い食事を取る
- 特に糖質やカフェインの取り過ぎには注意する
- アルコールを取りすぎない
- インスタント食品やファーストフードのような食品添加物を多く含む食事をできる限り避ける
- 食べ過ぎない、腹八分目を心がける
- 絶食は避け、消化に良いものを食べる
- 就寝の2〜3時間前には飲食しない
- できる限り同じタイミングで朝昼晩の食事を取る
- 間食を避ける
運動習慣における注意すべきポイント
運動時には、交感神経が優位になります。
運動によって交感神経を強く刺激する行為は、同時に副交感神経との切り替えをスムーズにする働きがあります。
また、運動にはストレスを発散してくれる効果があります。
そのため、運動不足になると、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズに行うことができなくなってしまう上に、ストレスも溜まり気味になってしまうため、自律神経が乱れる引き金となってしまいます。
そうならないためにも、次の4点に気をつけながら、適度な運動週間を心がけていきましょう。
運動は遣り過ぎても体が疲れてしまいます。毎日30分程度の運動が適切です。
過度な運動は体の肉体的ストレスにつながります。
そのため、運動はウォーキングやストレッチ程度の運動がベストです。
1週間に1回3.5時間の運動を集中的に行うよりも、30分程度の運動を毎日続けるほうが効果的です。
就寝の4時間前までには運動を終える(運動時は交感神経が優位になります。
就寝2〜3時間前に運動を行ってしまうと、就寝時に交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかず睡眠習慣が乱れてしまいます)
睡眠習慣における注意すべきポイント
睡眠時には副交感神経が優位になります。
就寝時と起床時は副交感神経と交感神経が切り替わるポイントなので、夜更かしなどで睡眠習慣が乱れると自律神経が大きく乱れてきます。
そうならないためにも、次の4点に気をつけながら、健康的な睡眠習慣を心がけていきましょう。
- 毎日同じ時間に起床し、就寝するように心がける
- できる限り涼しく、静かで、暗い状態で就寝する
- 就寝場所の近くにスマートフォンやPCなど電子機器をおかない
- 毎朝起きたら、カーテンを開け、朝日をまず浴びる
- 音楽を聞いたり、本を読むなど、オリジナルの睡眠導入習慣を作る
- 睡眠リズムは休みの日でも変えない(休日にだらだらしない)
- 「寝なければいけない」と自分にプレッシャーをかけない
ストレス習慣における注意すべきポイント
食事、運動、睡眠を整えたとしても、日々受けるストレスの量が変わらなければ、ストレスが原因で自律神経が乱れてしまう可能性があります。
また、ストレスは人を暴飲暴食や過度なアルコール摂取、夜遊びなどに走らせる強烈な力があります。
そういった意味でもストレスの多い現代社会においては、食事、運動、睡眠のほかに、日々のストレスとどう向き合っていくかという「ストレス習慣」をつけることが大切です。
主に日常的に受けるストレスをどのように解消していく習慣をつけるか、がストレス習慣におけるポイントです。
基本的には自分の好きなことや興味のあること、趣味などに取り組む習慣を持つことで、ストレスを発散していくのが良いと思いますが、もし何も浮かばないという方は、次のストレス解消法を試してみてください。
※暴飲暴食や過度な飲酒、喫煙は、一時的なストレス解消にはなりますが、長期的に見ると自律神経の乱れを引き起こし、ストレスを逆に引き起こしてしまう要因になってしまうので、ストレスと向き合う方法としてはおすすめできません。
アロマオイルを活用する
良い匂いを嗅ぐという行為はストレス習慣においてとても重要です。
なぜなら、悪臭はストレスになるからです。
逆に良いアロマの香りは私たちの自律神経系やホルモン系、免疫系と呼ばれる体のコントロールを行う中枢部分に働きかけ、その香りに応じた働きかけを行うことができます。
胃の不調に良いアロマオイルの香りを嗅ぐことで、ストレスを軽減したり、自律神経を整える効果が見込めるだけでなく、胃の働きを促進したり、胃の不調自体を改善する効果も期待できます。
主に胃の不調については次のようなアロマオイルが良いと言われています。
- 柑橘系(スウィートオレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリンなど)
- ハーブ系(ペパーミント、フェンネルなど)
- スパイス系(ブラックペッパーなど)
メディテーション(瞑想)
メディテーション(瞑想)は自律神経失調症の改善方法の一つとしても取り入れられるほど、自律神経を整え、また不安やプレッシャーなどストレスを軽減する方法として有効とされています。
やり方は次の1〜4のように行います。
- 楽な姿勢で座る。
- 目を閉じ、呼吸にすべての意識を集中する。
- 3秒かけて息をゆっくりと吸い、6秒かけて息をゆっくりと吐く。このとき息をゆっくり吐くことに集中する。
- 呼吸だけに意識を集中し、この状態を10分ほど行う。(※最初長いと感じた人は、3〜5分程度から初めてみると良いでしょう)
これを朝と晩の2回行うだけで、ストレスを大幅に軽減する習慣を作ることができます。
また、自律神経がコントロールする人間の生体機能の中で、私たちが唯一意識的に止めることができるのが「呼吸」です。
そのため、呼吸を通じて自律神経を整える効果も期待できます。
乱れてしまった自律神経を整える
生活習慣など、自律神経が乱れる原因を改善したとしても、すでに乱れてしまった自律神経を整えない限り、今現在の胃の不調は改善していきません。
自律神経は私たちが意図的にアプローチをすることができない神経なので、自律神経と関係性が深い呼吸やツボなどから間接的なアプローチをかけていくのがおすすめです。
呼吸法を活用する
現代人は呼吸が浅くなりがちです。
浅い呼吸は交感神経を優位にさせる傾向があるため、呼吸に全意識を集中する事で、呼吸を通して乱れがちな自律神経を整える効果が期待できます。
なぜ、呼吸から自律神経にアプローチできるのか、その理由は、自律神経がコントロールする人間の生体機能の中で唯一人間が自分の意志でコントロールできるのが呼吸だからです。
呼吸法のように呼吸を通じて自律神経に間接的にアプローチする習慣を持つことで、自律神経を1日に1〜2回整える効果が期待できます。
1日朝と晩の2回、次の1〜4の手順に従って呼吸に全意識を集中して行うのがポイントです。
- 仰向けに横になる。
- 体全体の力を抜く。
- 息を3秒かけてゆっくりと吸い、6秒かけて息をゆっくりと吐く(複式呼吸を意識しましょう)
- 1〜3を繰り返し10回行う。
胃の不調に良いツボ押しマッサージを行う
東洋医学において、私たちの体の中には経絡(けいらく)と呼ばれる無数の気の通り道が張り巡らされていると考えられています。
またそれらは内臓同士を結びお互いに連携し合って私たちの健康を維持していると考えられています。
その経絡と経絡が交わる点を経穴(けいけつ)と言います。一般的にこの経穴をツボと呼びます。
東洋医学では、内蔵の不調によって病が起きると考えられているため、例えば胃に不調が起きたときには、胃とつながる経絡に悪い気が流れ、悪い気が経穴にたまりコリとなってあらわれます。
この経穴のコリをほぐすことで、胃にアプローチを行い、胃の不調を改善していくのがツボ押しマッサージの考え方です。
つまり自律神経の乱れによって生じた臓器の乱れは、臓器に関連する経穴にコリとなってあらわれます。
それを探る事によって東洋医学の医者はどの臓器に異常があるのかを見極め、そのコリをほぐすことによって各臓器の不調を改善していきます。
胃の不調が起きた場合には、次の経穴をほぐすことで、胃の不調を改善する効果が期待できます。
また、胃は自律神経やストレスに大きく関係する臓器であるため、ストレス解消や自律神経を整える効果も期待できます。
合谷(ごうこく)
精神を落ち着かせる効果のあるツボです。
また、自律神経を整えてくれるツボとしても有名です。
親指の腹で30回ほど、気持ちいいぐらいの強さで指圧すると良いでしょう。
労宮(ろうきゅう)
緊張と解き、神経を鎮め、リラックスさせる際に有効なツボです。
親指の腹で手首の親指側に向かって力を加えると良いです。
ゴルフボールなどを転がしながら刺激しても良いです。
大淵(たいえん)
親指の付け根あたりにある、骨の出っ張りの下にあるツボです。
げっぷが多く出る際に有効なツボです。
大陵(だいりょう)
手首にある横皺の中央部分にあるツボです。
胃など消化器官の不調を改善する効果が期待できます。
内関(ないかん)
自律神経を整えてくれる腕のツボです。
手首を掴むように親指の腹で指圧するのが良いです。
骨があるため力を入れすぎないように注意しましょう。
足三里(あしさんり)
ひざのお皿の下の外側のくぼみから指4本分下にいった所にあるツボです。
消化器官の不調を改善する効果が期待できます。
それでも治らない胃の不調におすすめの改善方法とは?
胃は自律神経と深い関係にある臓器です。
そのため、先ほどご紹介した通り生活習慣の改善や、乱れてしまった自律神経にツボや呼吸を通してアプローチする方法も胃の不調を改善するためには有効です。
また、起きてしまった胃の不調を一時的に押さえる手段として総合胃腸薬なども有効だと言えます。
しかし、これらはあくまで自律神経に間接的にアプローチをする対症療法であるため、効果が出るのに少し時間がかかります。
また、生活習慣の改善や対症療法を続けていくためには、自分の生活を律していく必要があり、非常に大変です。
そんな自律神経の乱れにより近い場所から直接アプローチし、自律神経を整えることができる方法としておすすめなのが「お腹のコリほぐし整体」です。
東洋医学では、すべての病気は五臓(肝・心・脾・肺・腎)を中心として内臓に原因があると考えられています。
ストレスによって体が緊張し、体内の「気」「血」「水」の流れが悪くなると、自律神経が乱れ、自律神経がコントロールしている内臓の不調につながってきてしまいます。
特に胃は自律神経と関わりが深い臓器なので、自律神経の乱れによる影響を受けやすくなります。
この胃の不調はお腹にコリや痛み、違和感として体に現れてきます。
例えば胃の不調は、次の図の胃の部分にコリや痛み、違和感となってあらわれます。
- 胃もたれ、胃の膨満感、乗り物酔い、胃下垂・・・脾
- 胸焼け、逆流性食道炎・・・肝
このコリや痛み、違和感をさすったり、つまんだりして解消することで、胃の不調の改善につなげていくのが「お腹のコリほぐし」です。
- 胃もたれや胸焼けなど胃の不調が続いていて辛い
- 胃腸薬を飲んでも胃の不調が改善しない
- 病院に行っても特に異常はなく、胃の不調を改善するためにはどうすれば良いかわからない
- おそらくストレスや過労による胃の不調だと思われるが、どう対処していいか分からない
- 原因不明の胃の不調に悩まされ続けている
一般的に言われている胃の不調対策や生活習慣の改善、セルフケアをやってはいるものの、胃の不調が改善しないという方や病院や近くの整体に行っても原因がわからず、どう改善していけば良いかわからないという方は、その原因は自律神経にある可能性が高いと言えます。
「お腹のコリほぐし」で自律神経の乱れを直接改善していくことが、胃の不調を改善する一番の近道かもしれません。
当院では、19年の臨床経験と、これまで約45,000人の施術経験から見出した、あなた独自のコリを探し出し、「お腹のコリほぐし」が行える関東圏内でも数少ない治療院です。
人間の生命エネルギーを生産する胃の不調は日々のパフォーマンスを大きく下げてしまう要因の一つです。
胃の不調で悩んでいる、苦しんでいるという方はぜひ一度お問い合わせください。
お電話ありがとうございます、
東陽治療院でございます。